2020年上期(1~6月)のマクロ経済の景気動向は、2019年と一変しました。中国より端を発したウイルスが世界を席巻、人々の移動が戦争でもないのに制限されるという、これまでの人類が経験のないことになっています。そして、2020年上期は日本の歴史上でもはじめてとなる緊急事態宣言が出て、約2か月の間、外に出ることが憚られる事態となりました。当然GDPは最大の落ち込みとなったのですが、その後奇妙な株高により景気に楽観論すら出ることとなりました。しかし、実体経済の悪化は避けようがなく、特に宿泊・飲食・旅行・アパレル・運輸など幅広い業種はこれから厳しい冬を迎えるでしょう。
さて、マクロ経済については悲観的な事ばかり述べてまいりましたが、「湾岸マンションマーケット」という狭い業界では緊急事態宣言後の大商いは予想外の出来事でした。特に、夫婦共働きで在宅勤務ができる、コロナの影響を受けない業界にいらっしゃる方たちにとって、この2か月間の外出自粛は家を買うという行為に対して前を向かせるものでした。3~5月にかけては、景気に対する先行き不安と新築住み替えの発生により、取引坪単価がどのエリアも下落し、緊急事態宣言で4・5月は取引がほぼ停止しましたが、5月最終週に入り、問い合わせが過去例をみないほど増えて6月に入ってから取引は急回復しました。現場にいるものとして、これは完全に予想外の出来事でした(この勢いは原稿執筆時点の12月でも続いています)。
湾岸マンション価格ナビ対象マンションの取引数は前年同期と比べると107.7%となりました。4・5月がほぼ取引停止で会ったことを考えると驚異的な水準です!なお、評価額は0.43%の上昇となりました。こちらは、3~5月に物件価格が一度下落したことを受けて、小幅な上昇となっておりますが、来期(7月~12月)は全エリアでさらなる上昇が確実視されております。
【豊洲エリア】
2019年下期は前年同期比成約数が落ち込みましたが、そこからの回復が思ったように進まなかったのが豊洲エリアです。現場から率直な感想を言わせていただければ、とにかく「売り物件が無い」、この一言に尽きます。旺盛な需要はあるので、今売りに出すと、相対的に買い手が付きやすい状況にあります。
今期最も活発に取引されたのは豊洲3丁目の駅から一番近いダブルタワー「シティタワーズ豊洲ザ・ツイン」であり、成約数20は4半期ぶりの活発さです。3丁目の「THE TOYOSU TOWER」「シティタワーズ豊洲ザ・シンボル」もすべて上昇判定とさせていただきました。TTTは坪330万円に近づいています。シンボルも成約数17と大きく動いています。
豊洲6丁目のシンボリックタワー「SKYZ TOWER&GARDEN」は、0.93%の上昇判定とさせていただきました。現地を見ていただければわかりますが、ウィズコロナの時代にあって、足元に広い公開空地に親水公園が直結されている状況は、とても心強いものがあります。緊急事態宣言下でも、豊洲6丁目公園は遊ぶ方でかなり賑わっていました。
豊洲エリアで、もっとも上昇幅が大きかったのは内外共に最も高い評価を受けている「アーバンドック パークシティ豊洲A棟」となりました。豊洲ベイサイドクロスが完成し、上層階にあるホテルも日常使いできる利便性がります。先日視察を兼ねて1泊宿泊しましたが、東京の中でもこれほどの眺望を備えたホテルはそうそうないのでは?と思うほど、気持ちの良い景色でした。拡張されたららぽーと豊洲3の飲食店街はいつも満席で、住商近接エリアの強さが際立ちます。
【有明エリア】
6月17日に開業した有明ガーデンにより、有明は第二の街びらきの様相です!前回のレポートで“「シティタワーズ東京ベイ」へのエリア内移動は相当数あり、2020年上期から在庫は増えると予測しております”と書かせていただきましたが、その言葉通り今期の1~3月は相当な量の売り物件が供給されました。供給が一時急増したため、上期の成約単価は伸びませんでした。
「ブリリア有明スカイタワー」の成約数21は、今期の湾ナビ評価対象マンションの中でもトップとなりました。しかし、供給が多く在庫が一時的にダブついた関係から、全マンション唯一の下落判定(-1.08%)という結果になりました。しかしこれは、特殊要因によるものであり、下期は回復していると予想します。
同じように住み替えで供給が増えたマンションに「ブリリア有明シティタワー」が挙げられます。総戸数600のマンションが半期17の成約数は、驚異的ですらあります。眺望を重視された方に好まれるマンションです。
有明ガーデンが図らずも一斉ではなく順次オープンということになり、泉天空の湯、首都圏最大の無印良品オープン、そして年末から羽田空港直通バス運行開始と話題が途切れなかったこともあり、有明エリアはこれからも引き合いが強いことが予想されます。
【東雲・辰巳エリア】
2019年下期にくらべて、すべてのマンションの取引量が増加しました!これは湾ナビ始まって以来の出来事です。ただし、湾ナビ評価額を大きく上回る成約単価はなく、上昇判定は「ブランズ東雲」の1棟のみとなりました。「プラウドシティ東雲キャナルマークス」の分譲坪単価330万円とかなり乖離があることもあり、1500万円安くて広い部屋が購入可能ということもあり、比較されて買い手が入ることも多いです。
当該エリアでは「パークタワー東雲」の取引数が11、「BECON Tower Residence」「ザ 湾岸タワーレックスガーデン」の取引数がそれぞれ10、と戸数を考慮に入れると大変活発な取引が行われています。
隣接エリアである豊洲・有明に比べて、東雲のコストパフォーマンスがかなり際立ちます。住環境に特化したエリアであり、落ち着きを求められる方にはお勧めできる街です。大半のマンションは有明ガーデンにも歩いて行けます。
「ブリリア辰巳キャナルテラス」「バンベールルフォン辰巳」はどちらも強気の成約事例を観測したため、評価額を上昇させていただきました。都内のマンション単価が高い中、辰巳の割安さはかなり際立ってきました。
【晴海エリア】
「ザ・パークハウス晴海タワーズ クロノレジデンス」は前期の弱気な売り出しがすべてなくなり、今期取引数12を観測しましたが概ね湾ナビ評価額と変わらない水準となりました。
前期より掲載させていただいている「パークタワー晴海」ですが、取引戸数は4で、かなり鈍い動きとなっております。ただし、相当強気の成約が多かったため、1.93%の上昇幅とさせていただきました。このマンションの評価額平均坪単価は359.5万円と駅遠物件にかかわらず、パークシティ豊洲A棟を超える評価が現時点ではされています。この結果は、駅遠物件と揶揄されることも多い「HARUMI FLAG」を勇気づけるものでしょう。
なお、「HARUMI FLAG」の分譲は停止したままであり、来年持ち越しとなっています。比較的割安な価格で数多くさばくという戦略は取れなくなり、今後に注目です。
【月島・勝どきエリア】
上昇が止まらなかった「キャピタルプレイス ザ・タワー」は取引戸数わずかに1と、売り出しも少なく、事例も評価額の範囲内だったため、今回はじめて横ばい判定とさせていただきました。すぐそばの「MID TOWER GRAND」は内覧会が終わり、これから順次入居となります。賃貸・売買ともにマーケットに出てくるため、今後に注目です。
「勝どき ザ・タワー」は引き続き活発な取引を観測しましたが、成約値は一服しましたので、3期続いての横ばい判定とさせていただきました。先日、足元にある東京BRT停留所から新橋まで足を延ばしてみました。環状二号線を通り6分で新橋への停留所に到着し、勝どき-新橋間の直線距離の近さを改めて体感しました。
「パークタワー勝どき ミッド」の第一期販売が盛況だったことも触れなければなりません。坪単価420万円ですが南角部屋に人気が集中しました。勝どきで1億円を超える部屋に次々と札が入る様子は、このエリアのステージがひとつ上がったことを実感しました。
2020年上期の成約戸数(湾ナビ取扱いマンションのみ)は、前年同期比で+7.7%でした。
2020年上期の全体評価額変動率は、前期比+0.43%の微上昇となりました。