2017年下期(7~12月)は上期に引き続き景気の回復傾向が続き、日経平均株価は2.3万円近い水準まで上昇して2017年の取引を終えました。しかし、肌感覚においては12月から2018年1月にかけては景気が若干下降に転じたと判断しております。ここ数年の”適温経済”といわれる物価が上がらないままの好景気は、日本だけではなく海外経済も続きましたが、2年目になった米国トランプ政権が仕掛ける貿易戦争を境に、一挙に景気が動くかもしれず、2018年の中旬からの景気は先が読めない展開といえそうです。
さて、マクロ経済はそのような環境ですが、都心部のマンション市況は2017年も一層過熱感を増しました。既にかなり上がった感があった2年前に比べてそこから更に10数%の上昇を記録している地点もいくつかあります。新築物件の高騰ぶりは都心だけでなく、近郊・郊外にも広がっています。そんな中、湾岸中古マンション相場はまさに「適温状態」でありました。
2016年下期と今期の成約数は、105%(2016年下期時点での湾ナビ掲載物件のみで比較)。前期から今期の評価額変動は、0.41%の上昇判定ではあるものの、全体としては横ばい判定が多くなっています。過熱する都心・近郊部に比べて賃料基準で考えると湾岸中古マンションはお得感すら出てきています。
前回のマーケットレヴューからの繰り返しとなりますが、一部の雑誌やネット記事によれば「湾岸マンションがいま中国人の投げ売り状態、価格暴落」という煽り記事をよく見かけますが、湾岸タワーマンション地区を専門とする当社の観測範囲ではまったくその事実はなく、引き続き堅調な推移を観測できます。
【豊洲エリア】
豊洲エリアは今期も全体的に横ばいの評価となりました。
評価額を変更させていただいたのは、「アーバンドック パークシティ豊洲A棟」「BAYZ TOWER&GARDEN」「パークホームズ豊洲 ザ・レジデンス」の3棟で、いずれも上昇判定とさせていただきました。
「アーバンドック パークシティ豊洲A棟」は、上期で15・下期で9の成約事例があり、強い引き合いがあるため下期の成約値は以前よりも若干の上昇傾向が見られました。豊洲駅前ビルの開発で、ららぽーと豊洲が駅直結となることもあり、需要は底堅いものと考えられます。
「BAYZ TOWER&GARDEN」の下期成約事例数は5に留まったものの、いずれも当社の評価額よりも高い成約が続いたため、全体トップの4.42%の上昇幅とさせていただきました。SKYZと併せて問い合わせの多い物件です。豊洲ぐるり公園の全面開通で新豊洲全体を囲む公園と一体となることで、更に物件の魅力がアップされると考えます。
「パークホームズ豊洲 ザ・レジデンス」は入居からしばらく経ち、事例の傾向も見えたため、こちらも2.94%の評価額調整を行わせていただきました。築浅・免震・豊洲徒歩5分といった好条件が揃っていて、一定の引き合いがあります。
豊洲エリアトップの成約事例数は20件を数えたシティタワーズ豊洲 ザ・ツインでした。豊洲三丁目はザ・シンボル(19)、THE TOYOSU TOWER(18)と湾岸の中でも特に活発な取引が見られます。
【有明エリア】
有明エリアは、上昇判定3・横ばい判定3の結果となりました。有明のパイオニアである「オリゾンマーレ」は北西側・南東側それぞれの開発の姿が明らかになったこともあり、売買双方納得の上での取引数上昇が観測されました。
下期エリアトップの成約事例数は「ブリリア有明スカイタワー」の13事例でした。有明エリアの中でもファミリー色が強い同マンションは、子育て世代が有明タワーを見学する中で安心して選べるマンションとなっています。
「ブリリア有明シティタワー」は、投資向けのシングル・DINKS向け間取りがかなり高い水準で取引されたのを反映し、エリアトップの2.92%上昇とさせていただきました。
新規分譲している「シティタワーズ東京ベイ」が住友不動産特有の期を追うごとの値上げをしており、板状マンションの「プレミスト有明」もかなり高い水準の値付けであると言われている中で、大規模商業施設の内容が一部リークされつつあることから、これからも有明エリアの中古タワーマンションはかなりの引き合いがあるでしょう。特に3LDKの売出しが少ないことも有り、好条件の部屋はすぐに買い手が付く状態です。
【東雲・辰巳エリア】
「ザ 湾岸タワーレックスガーデン」の下半期取引数が9、上半期が13と戸数の割にかなりの取引が観測されました。これに伴い、1.90%の評価額上昇とさせていただきました。元々60平米前後の2LDKが多いため、坪250万円くらいでは5000万円という一つの基準以下に収まるため、買い手側も安心できることが成約数の多さにつながっています。
キャナルコート内のタワーマンション相場ですが、「Wコンフォートタワーズ」が-1.03%の下落、「プラウドタワー東雲キャナルコート」が-1.09%の下落となった一方で、他のマンションは横ばい判定とさせていただきました。
プラウドタワー東雲は、ここ数年続いてきた上値が一段落したことの影響です。Wコンフォートタワーズは立地面ではエリアの中で最も魅力的なものの、そろそろ築15年近いということで、専有部共用部共に経年が見られるからかもしれません。
東雲キャナルコートエリア内物件では「アップルタワー東京キャナルコート」の取引数がエリアトップです。豊洲のタワーマンションに比べても2/3程度の坪単価水準は割安感があり、またWコンフォートタワーズほど広い間取りではないため、総額表示も落ち着く傾向にあり、エントリー層の引き合いがあります。
東雲エリアは、運河沿いパチンコ店の隣の建物がすべて取り壊され、これから珍しい円形の大規模新築板状マンションが野村不動産分譲で予定されています。ここからの取引活発化が楽しみです。
【晴海エリア】
「ザ・パークハウス晴海タワーズティアロレジデンス」が下期取引数12・上期取引数13とかなりの水準です。「パークタワー晴海」の販売平均坪単価から比べるとすぐに入居できて低金利を確定させられることもあるため、鏡台物件の「ザ・パークハウス晴海タワーズクロノレジデンス」含めて築浅中古物件へ一定の流れが出きています。
北側の都有地は半分がBRT用の基地・残りの半分はオリンピック用輸送拠点となっています。またパークタワー晴海建設地とモデルルームの間に、選手村分譲用モデルルームの建築看板が立っていました。
【月島・勝どきエリア】
「勝どき ザ・タワー」の下期成約数は驚異の25、上期の成約数を合わせれば2017年合計61件と、間違いなく単棟の成約数としては日本でトップでしょう。勝どき ザ・タワーは分譲時の坪単価より約1割値上がりしていますが、この評価上昇も納得の上で買いの手が多く上がっています。勝どきは数年後に、超大規模タワーマンションの建設ラッシュを迎えることになります。これからも一定以上の取引が成立するでしょう。
さて、中央区が住宅建設抑制策に舵を切りました。いま予定されているタワーマンション以外はなかなか建てられなくなることから、取引のメインは良質な中古物件に移っていくことになります。
2017年下期の成約戸数(湾ナビ取扱いマンションのみ)は、前年同期比で+5.3%でした。この数字は、前年同期から湾ナビ掲載が始まっている「キャピタルプレースザタワー」「勝どき ザ・タワー」「ザ・パークハウス晴海タワーズ ティアロレジデンス」「BAYZTOWER&GARDEN」「パークホームズ豊洲ザ・レジデンス」の成約数を評価対象に加えております。適温経済がどこまで続くかはわかりませんが、新築マンションの高騰が収まる気配はなく、エリア内でも継続的に新築マンション開発が進んでいきますので、今後も湾岸中古マンション売買は堅調に推移すると予想します。
2017年下期の全体評価額変動率は、前期比+0.41%の微上昇となりました。