2017年上期(1~6月)は景気の回復傾向が続いています。海外経済が底堅い水準で動く傾向から今後も景気の拡大局面が続く傾向といえるでしょう。ただし、東京エリアの新築マンション情勢は2015~2016年をピークに、売れ行きが良いところと悪いところの差がはっきりしてきました。これは景気の回復傾向が続いているとは言え所得の上昇は緩慢な中、不動産相場が低金利政策の後押しもあり一気に上がり、もはや実需層がついてこれない価格まで来てしまっているからです。
湾岸エリアの2つの超大規模タワーマンション「パークタワー晴海」「シティタワーズ東京ベイ」の価格が大方の事前予想よりも「安かった」という感想が多かったのは、あまり表では語られていない市況の悪化を示すものでした。
そのような情勢の中で、2017年上期の湾岸中古マンション相場を一言で総括すれば「横ばい」となります。数字を見てみましょう。
2016年上期の湾岸マンション価格ナビ評価額対象マンションの成約数と今期の成約数を比較すると、99.1%とほぼ変わらない水準となりました。
また、公開している評価額と実際の2017上期成約事例を比較し、評価額を変えず「横ばい」と判定したマンションは24。上昇4・下降2と比べるとその比率がわかります。一部の雑誌やネット記事によれば「湾岸マンションがいま中国人の投げ売り状態、価格暴落」と書かれていますが、湾岸地区を地場とする当社の観測範囲ではまったくその事実はなく、むしろ堅調な推移を観測できました。
【豊洲エリア】
豊洲エリアは全体的にほぼ横ばいの評価とさせていただきました。
上昇判定になったのは、「アーバンドック パークシティ豊洲B棟」のみです。そもそも物件の売りがほとんど出ないタワーマンションでありますが、上期は6事例あり、以前よりも若干高めの成約があったための評価替えです。
一方で、湾ナビ2017上期で評価額下降判定となったのは、「THE TOYOSU TOWER」と「シティタワーズ豊洲ザ・シンボル」で、どちらも豊洲3丁目物件です。豊洲3丁目エリアの3棟はそろって築10年を迎えつつあり、住み替えの売り物件が増えております(ザ・ツインは前期-5.07%)。価格が以前よりも下がったことで、活発な取引が観測されます。「シティタワーズ豊洲ザ・ツイン」の成約数は半年で24事例と湾ナビマンション成約数の10%以上のシェアを1マンションで占めました。これは売主と買主の希望価格が合ってきたこと、豊洲徒歩4分の割にはバリューのある価格であることなどが理由かと考察します。
「THETOYOSU TOWER」と「シティタワーズ豊洲 ザ・シンボル」も共に13事例とこちらも多数の引き合いがあります。
「東京フロントコート」「スターコート豊洲」も維持費の経済性から一定以上の需要があります。どちらも前期比5割増以上の取引数です。
豊洲6丁目の「BAYZTOWER&GARDEN」は新築未入居物件の成約があまり芳しくなく、4事例にとどまりました。後述しますが、「勝どきザ・タワー」は同時期で36事例もあるので若干気になるところです。
【有明エリア】
有明エリアは、「シティタワーズ東京ベイ」の新規分譲があり、平均坪320万円前後と有明エリアでは経験のない高値であることから、周辺の中古タワーマンション取引が活性化されています。「シティタワー有明」「ブリリア有明スカイタワー」「ブリリア有明シティタワー」をそれぞれ上昇判定、他のマンションも横ばい判定とさせていただきました。
特に「シティタワー有明」は「シティタワー東京ベイ」と同売主であることから、築地のモデルルーム訪問後にこちらに見学、差額を見てこちらを契約という流れが観測されています。これは先程上昇判定となったマンション以外にも「ガレリアグランデ」「ブリリアマーレ有明」といったマンションでも同様のことが言えそうです。住友不動産は期を追うごとに値上げをしながら販売していくスタイルであり、「シティタワーズ東京ベイ」以外にも近く2つの新築マンションが計画されていることから、引き続き有明エリアの中古マンション取引は活性化しそうです。
【東雲・辰巳エリア】
「ザ 湾岸タワーレックスガーデン」の取引数が13と、湾ナビ観測開始以来もっとも取引が多い期間となりました。このマンションの他に、「ブリリア辰巳キャナルテラス」の取引も活発化しています。この2マンションが好調なのは、「5000万円以下」という共通項があります。
マンションは欲しい、でもこの高騰している状況下ではなかなか手を出しづらい、とお考えの方が買いやすいゾーンとなるのが4000万円台のマンションとなります。いつか不動産相場が冷却しても落差が少ないのではないか、という意識の現れかもしれません。
東雲キャナルコートエリア内物件では「BEACON TowerResidence」の取引がエリアトップとなりました。プラウド東雲キャナルコートとパークタワー東雲は、とても良いマンションですが、坪単価の関係上どうしても総額が張ってしまう傾向にあります。その中で、比較的お求めやすいゾーンに入っているこちらのマンションに、白羽の矢がたつのかもしれません。逆に「Wコンフォートタワーズ」の取引が停滞してきており、こちらは要観察事項です。東雲エリアで一番最初に立ったタワーであることから、立地面では一番優れているものの、間取りが今のトレンドと少し離れているのかもしれません。余裕のある時期に作られたタワーでありますので、今後取引が活発になることを期待しております。
東雲エリアは、運河沿いパチンコ店の隣に大規模な新築板状マンションが建設予定なことから、これからの取引活発化が楽しみです。
【晴海エリア】
「ザ・パークハウス晴海タワーズティアロレジデンス」が、「パークタワー晴海」の高値販売の好影響を受けて、取引数が上昇しました。未入居物件であればいまの低金利を確定させられることからも、築浅中古物件へ一定の流れが出きています。
ただ、都心と臨海部を結ぶBRT、2019年開始が間に合わないという報道がありました。豊洲もそうですが、BRTへの期待が大きかった晴海エリアにとっては、都政の混乱は非常に残念です。
【月島・勝どきエリア】
前期より「キャピタルプレース ザタワー」「勝どきザ・タワー」を評価対象に加えております。キャピタルゲートプレイスについては、前期より取引戸数は減少したものの、引き続き強い水準での引き合いがあることが確認されています。勝どきザ・タワーについては、半期の中古成約36事例と圧倒的トップでした。これは、竣工後に売主から発表されたキャンセル住戸がかなり高額だったことから、新築未入居住戸の購入が促されたと考察します。勝どきザ・タワーは引き続き中古の在庫数が極めて高い水準にありますが、これからも一定以上の成約がなされるでしょう。
2017年上期の成約戸数(湾ナビ取扱いマンションのみ)は、前年同期比で-0.9%でした。湾ナビは2016年上期より、「キャピタルプレースザタワー」「勝どき ザ・タワー」「ザ・パークハウス晴海タワーズ ティアロレジデンス」「BAYZTOWER&GARDEN」「パークホームズ豊洲ザ・レジデンス」を評価対象に加えておりますが、上記数字はこの影響を取り除いています。景気が今後も拡大局面にあると予想されていますし、今後もエリア内で継続的に新築マンションが販売されていきますので、売買を活発化させると予想します。
2017年上期の全体評価額変動率は、前期比+0.13%の微上昇となりました。
豊洲3丁目のように、売主と買主の目線があったマンションが劇的に成約事例数が劇的に伸びている一方で、売主サイドが強気のままのマンションは成約数が伸び悩んでいます。こうした評価は他の不動産仲介系サイトではなかなか目にすることができない情報と考えますが、勇気を持って発信させていただきます。私どもが目指すのは、売主と買主が双方納得できる取引の推進です。今後とも、売り買いどちらにも偏らない評価額公開サイトとして、注目を浴び続ける湾岸エリアのいまを発信し続ける所存です。