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三井健太第17回「勉強のし過ぎで買えなくなる罠」

初めてマンションを買おうという人には、「不安なことがたくさんあるため、できるだけたくさんの情報を集めて予備知識を持とう」という心理が働くようです。

そして、本を買って読む、ネットで調べる、複数のモデルルームを見学する、営業マンの説明に耳を傾けるといった一般的な学習方法を採ります。

 

どの学習法も悪くないのですが、問題は咀嚼や応用の方法などに問題ありと思われる人があるようです。

 

●見学のし過ぎで“イイトコ取り”の罠(青い鳥症候群)に嵌まる

あちら立てればこちらが立たず、あるいは帯に短しタスキに長し。これが、マンション(住宅)というものです。

雑誌の記事を見ていると、よく「待った甲斐がありました。3年探し続けて理想のマンションに出会いました」などという喜びの声が載っているときがあります。

本当にそうなのでしょうか?単に理想と錯覚しているだけなのではないか。私には、そうとしか思えないのです。理想のマンションなど、存在しえないのですから。

 

ただ、屁理屈を言えば、人によって理想の基準が違うから、他人が嫌だという部分があっても、当人にとっては理想なのかもしれない。タデ食う虫も好き好きというから、やっぱり理想だったのかもしれない。そういうことかもしれません。

 

閑話休題、人間には感情と理性があり、理性通りに行動できない人は少なくありません。分かっちゃいるが・・・というやつです。

マンション探しにおいても、予算を棚に上げて高い理想を求めていることは分かっているらしいが、実際の行動は理屈に沿わないという人があります。

 

平たく言えば、予算は5000万円、求めているマンション像は1億円という矛盾する行動を採っているのですが、このような罠にはまる原因を考えてみましょう。

 

見学回数が多くなればなるほど、モデルルームを見て舞い上がるような感動は次第に失って冷静さが増し、良し悪しを見分ける目が肥えて行きます。

同時に、理想のマンション像が頭の中にでき上がってしまいます。

 

モデルルームの見学を数多くこなして目利きになったつもりが、現実離れしたモデルルーム展示に判断力を狂わされ、それぞれのイイトコ取りした理想像が完成してしまうのですね。

 

マンション会社は、「売り」の部分を強調し、買い手の興味を引きつけることを狙った演出をしますから。

理想的な広さのベッドルーム、広いバスルーム、贅沢なユーティリティルーム、20畳もある広いリビングルーム、夢だったミセスデン(DEN=専用の部屋というほどの意味)、フルオープンのキッチン、専用のバルコニー付きキッチン、休日のブランチとしゃれたいスクエアで広いバルコニー、大きな納戸、古い箪笥は捨ててもいいと思えるほどの大きなウォークインクローゼットなど、それぞれの特長が記憶に多数残ります。

 

ところが、リビングルームを広くすれば、部屋は狭くなり、両方を望めば、全体の面積が広いものになる。広い部屋は、その分だけ価格が高くなって、現実からどんどん遠ざかって行きます。

 

そこに気付けばまだしも、その広さでも予算を上げずに買えるマンションを以前に見たことを思い出して理想を追い続けてしまいます。ここが問題です。

 

実は、そのマンションを何故選ばなかったのかと問うと、駅から少し遠く、向きが西だったから止めたのだと答えます。

 

次に、広さも満足、向きも南向きというマンションに出会ったが決めなかった。その理由は収納が足りないからだと。

そのマンションは、キッチンから直接バルコニーとユーティリティに繋がっていて、家事動線がとてもいい。それまでにない理想のマンションだと強い印象を持つに至ります。しかし、「せめて収納スペースがあと少し広かったら良かったのに、残念」とこぼしながら見送ります。

 

このようなことを繰り返して行くと、イイトコ取りの理想像が刻み込まれて行きます。

 

例に挙げたような罠にはまってしまう人は意外に多いのです。問題なのは、あり得ないもの、あるいは予算から見て不可能と思われるような高望みをしてしまう人です。

 

隣の芝生が青く見えてしまうのが人間の通弊でもあり、これは仕方ないことなのかもしれません。

メーテルリンクの「青い鳥」という作品。貧しい家に育ったチルチルとミチルの兄妹は、幸福を招くという青い鳥を求めていろいろな国に旅に出かけます。しかし、結局どこにいっても青い鳥を捕まえることができずに家に帰ってきます。

二人は疲れ果てて眠り、夢から覚めると、なんと家で飼っていた薄汚れたハトが青い鳥になったのです・・・。この物語になぞらえることができそうな人は結構多いようです。

 

●木を見て森を見ない状態に迷い込む罠

ある建築家の著書に、「〇〇の部分を△△の材料で造ったマンションは三流だ」や、「このような工法は一流マンションでは採らない」などと記載してあります。

「三流マンションの根拠とする項目がずらりと並んでいるので、しっかり勉強した人は、モデルルーム見学に行き、パンフレットを見てチェックし、該当する箇所が1点でもあると、三流なのかと疑います。

 

ある人は、場所も良く、私の評価ではかなり高い得点がつく物件でしたが、本の主張そのままに三流と決めつけて止めてしまいました。

 

別の例ではキッチンのワークトップが人工ではなく天然の御影石でできていました。洗面所も同様で、大きな三面鏡や女性の化粧道具が種類ごとにきれいに納まる設計になっていました。

また、掃除のしやすい継ぎ目のないタイプの洗面ボウルや、ガスコンロ前のホーローパネルもさっと一拭きと言われ、すっかり気に入りました。

寝室には、ウォークインクローゼットが付き、服装品がたくさん詰め込めるように感じました。

モデルルームでは、扉や引き出しを開けたり閉めたりしました。風呂の浴槽に体を沈めてみて広さを実感し、感激は絶頂に達しました。

 

こうした行動を繰り返すうちに、「ここの風呂は狭いな」とか「コンロの前壁はタイルか。掃除が大変だ」などと、細部に「ダメ出しする」クセができてしまいました。

 

細部も大事ですが、優先するべき条件は他の所にあるはずです。それが満たされれば、後順位の条件は目をつぶることも必要なのです。ところが、細かな条件ばかりに目を向け妥協しようとしません。

 

「木を見て森を見ない」でいると、遠回りになってしまいます。

 

●本の記述には重要度の順番がない

マンション選びのハウツー本は、非難を恐れず言えば、瑣末なことを優劣なしに羅列しているだけです。

物件選びの際に注意すべきこととして、場所選び、建物選び、住宅ローン選び、ときには業者選びまで、メリット・デメリットを満遍なく述べています。

 

建築家の著書であれば、よりレベルの高い構造、遮音性の高い給排水設計、あるいは断熱効果の高い工法や材料などに言及するのは当然のことです。幾通りかの工法や技法、部材、設備などを紹介しています。

それらは、現実的に採用されることの少ないものも含まれていますし、著者が主張する三流という施工方式でも、大手マンション業者が普通に採用していたりします。

 

結局、読み終わったあとに「どれが良いかさっぱり分からない」のです。

 

雑誌の記事でも、「低層が良いか高層が良いか」や、「完成済みマンションか青田買いか」のような場合、結論はそれぞれのメリットとデメリットを並べて、あとは貴方次第と結論付けるものです。

偏った記事は書けないので、仕方ないことなのでしょうか。

 

●営業マンを疑って陥る罠

次は、勉強不足の営業マンにばかり会ってしまうことで起こる罠です。

営業マンもいろいろなタイプがいますし、所属企業の教育の仕方にもよりますが、経験が不十分、知識不足のままで現場に降りている例は多いものです。

チームとして仕事をこなせばいい、未熟な担当者の足らない部分はベテランがカバーできるはず。企業側はこのようにと考えている節があります。

 

しかし、未熟な担当者につかれた顧客にとっては迷惑な話です。繁忙期には、ベテランも新人もない状態なっていて、咄嗟に場当たりな、あるいは正確性を欠く説明で乗り切ろうとする営業マンも少なくないからです。

 

説明を聞いて「おかしい」と一瞬でも感じたら、その先の説明をすべて疑って聞くことになりかねません。決して良いことではありません。反対に、「おかしい」とも思わなかったら、怪しい知識を掴んでしまいかねません。

 

一方、営業マンは「都合の悪いことは黙っている」という習性を持つ人種です。肝心のことになると、焦点をずらしたり、話題をそらしたりして逃げようともします。

このため、買い手は、営業マン不信という固定観念を持つに至り、何でも裏付けを取らなければ済まないクセが染み込んでしまう人もあります。

 

●近接専門家から得る知識が混乱に拍車をかける

売り手(営業マン)不信に陥った人は、周囲の知人に意見を求めます。しかし、ここで注意しなければならないことがあります。

 

不動産に詳しそうな人というと、不動産会社に勤めている人、銀行の不動産部の人、同じく鑑定部の人、建設会社に勤めている人、建築家などが挙げられます。

 

しかし、マンションは不動産の一種に違いないのですが、不動産のジャンルは広く、マンションに詳しい人かどうか、そこが問題です。

 

中古マンションと新築マンションでも違いますし、建売住宅の営業マンにマンションのことが詳しい人は殆んどありません。また、建築士は不動産のプロではありませんし、鑑定士も価格の高い・低いはたちまち査定してくれるかもしれませんが、大乗的な見地、あるいは俯瞰的な判断を求めても無理があります。

 

これらの“近接”専門家の意見は「当たらずとも遠からず」であり、一面は真理を捉えていても大局的には誤っていることが往々にしてあります。言い換えれば、マンション購入のキ―ポイントを置き去りにして意見を言うものと思った方がよいので、当てにならないのです。

 

●万事がネガティブになり、決断ができなくなる罠

以上に述べたように、勉強することは当然必要なことであり良いことですが、その方法や活用術、咀嚼の仕方などを誤ると、羅針盤を失った舟に乗っているようなもの、自分の立つ位置すら分からない状態に陥るのです。

 

人間は、革新的なことを行なうとき、大きな心理的抵抗を感じます。ゆえに、昨日と同じ今日の方がラクなものです。

高額な買い物であるマンション購入は、人によって革新的な行為です。疑心暗鬼や不安があれば、抵抗は一段と大きくなります。心はネガティブになり、決断は覚束ない状態になります。

 

●貴方が知りたいことは、きっとこんなこと

買い手がマンションの基礎的な知識や情報を得ようとするのは、視点を変えて考えてみると「不安」の解消にあると言えます。その不安は、大きく分けると3つあります。

 

1.商品に対する不安
2.売主に対する不安
3.将来に対する不安――の3種です。それぞれをもう少し詳しく見ていきましょう。

 

1.商品に対する不安「このマンションは大丈夫か?」

□手抜き工事はしていないだろうか?

□図面だけで購入してしまって大丈夫だろうか?

□上階の音に悩まされることはないだろうか?
□お隣さんはどんな人だろうか?

□将来、多額の修繕費に悩まされることはないか?
□この物件で決めてしまって本当にいいのか、他にもっと良いものがあるのでは?

□管理費の値上げの心配はないか?

□西向きでも本当に問題ないのか?
□ベイエリアの超高層マンション、本当に地震は大丈夫なの?

 

2.売主に対する不安「この会社は大丈夫か?」
□気に入ったマンションがあるのだが、無名業者が売主。どこをチェックしたらいいか?
□アフターケアは大丈夫だろうか?(何かあった時に、きちんと対応してくれる会社だろうか)

□廃業・倒産して消えてしまうことはないだろうか?

□引渡しまできちんと面倒を見てくれるのだろうか?

 

3.将来に対する不安「今はいいけど先々は大丈夫か?」

□将来、金利が上がっても本当に大丈夫か?

□今は払って行けるが、将来どうなるか分からないしなあ!

□病気や失業したら?
□転勤になった時どうする?
□買替えたい時、うまく転売できるだろうか?

□20年、30年先、マンションの価値はどう変わるのか?

 

このような不安を解消するために、貴方は何を頼りにしますか?インターネット情報ですか? 本や雑誌の知識と情報ですか? 友人・知人の話ですか?親・兄弟の助言ですか?

 

手っ取り早いのは、実は販売担当者ではありませんか?
こうした疑問を一つ一つ自分で解決・学習するのは、かなり大変です。やはり、営業マンに質問して学習するのが早いようです。

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