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三井健太第15回 北向き住戸はお買い得?

マンションで「どっち向き?」というとき、普通はバルコニーのある側の部屋、つまり「リビングダイニングルーム」がどっちを向いているかを意味します。

日本人は昔から「南向きが良い」と考えて来たせいか、マンションでも南向きの人気が高いのですが、近年は少し様子が違って来ました。

マンションの価値は、向きだけで決まるものではない、南向きであることも大事な要素には違いないが、他に優先しなければならないことがあると気づいたためです。

 

●家は「夏涼しく・冬暖かいこと」が基本だった

 

基本だったと過去形で書いたのは、冷暖房機の普及によって、温度調節に困らなくなったため、優先条件の順位が下がったためです。

 

夏は太陽が高い位置にあるとはいえ、少しは当たります。そこで、夏の日差しを簾で遮断し、風通しの良い家に住むことが生活の工夫でした。

冬は反対に奥まで入ります。冬の太陽は有難いものですが、寒さ対策は大変でした。日本の木造家屋は隙間風が入って来るからです。マンションで隙間風の心配はなく、むしろ気密性が高いので、結露を心配しなければならないほどです。

それも、最近は「複層ガラス」の開発によって解決されつつあります。

 

通風の問題はどうでしょうか?夏の暑さをしのぐために「通風」は欠かせないテーマです。一戸建てでは窓を風の入口と出口、そして通り道を設けることで解決して来ましたが、マンションではこれが課題として依然残っています。

 

南から風が入るとしても、北は玄関なので防犯上、開けることができないため出口がないのです。出口がなければ風通しはできません。しかし、それも克服して来ました。玄関わきに小窓を設けるとか、風が抜ける特殊な玄関ドアの採用などです。

 

解決が難しいのは「内廊下式」のマンションです。廊下側に窓がありませんし、仮に玄関を開けたとしても、その先が壁なので効果はありません。しかし、内廊下式のマンションは「ホテルのようだ」として人気があります。こうした傾向を重ね合わせると、通風の問題は二の次になった印象を受けます。

 

先日お会いした方は、遠くまで見える空の広いマンションが欲しい、さらに窓を開けて暮らしたいと、風通しの良い間取りにもこだわっていました。タワーマンションの多くは上階なら空を見て暮らせるに違いありませんが、風通しは難しい条件です。外廊下式もないことはないですが、多くは内廊下式なだからです。

 

●真南を向く住戸の北向き個室

 

いわゆる田の字型の間取りは、玄関の両脇に個室がふたつあります。リビングルームが真南に向いていたら、この個室は真北を向くことになります。しかも、玄関脇の個室の窓は極端に狭いものが多いので、真っ暗な部屋であることも多いのです。

 

しかし、真北ではなく45度東にずれていたらどうでしょうか?朝日が入る可能性がありますね。反対に西に45度ずれていたらどうか、言うまでもありませんが、お子さんが学校から戻ったとき個室に太陽が差し込む明るい部屋になっているかもしれません。

 

こんなふうに考えると、永遠に北向きの暗い部屋を抱える「真南向き」よりは「東南向き」か「西南向き」のほうがよさそうです

 

●南向き以外はどうなの?

 

冷暖房機器の普及によって、日本人の家に対するこだわり方が変化して来ましたが、「南向き信仰」は依然として根強いようです。ニーズの変化はデベロッパーが敏感に感じ取っているのですが、土地の形や道路との関係、都市計画上の制限などがあるため、南向きに統一したプランは事実上不可能なので、やむを得ず西向きや東向きを作って来ました。コの字型マンション、L字型マンションが代表的な形ですね。

 

しかし、南にこだわる人も多いので、売りにくい東や西向きの部屋は、その弱点を補う要素をプランに加えたりもしますが、最終的には南より価格が安いことで販売促進を図ろうとします。

 

それはさておき、東西南北の向きの違いは、どのような長所・短所を生んでいるのでしょうか?

 

実は、冬には東向き住戸に比べて西向き住戸がよく売れます。なぜなら、寒い時期には午後になると部屋の奥まで入り込む西日をありがたいと感じるからです。逆に夏の暑い時期には、西日は嫌われ、西向きに比べて東向き住戸の方が売れ行きはよくなります。購入を決断する季節の感覚で決めてしまい、年間を通して住まう住戸を決める人が少ないのです。人間とは面白いものです。
但し、東日本と西日本では事情が少し異なります。つまり、平均的な生活時間帯(何時に起きて何時に寝るかなど)は同じにもかかわらず、日の出、日の入りの時刻が異なるからです。次の表をご覧ください。

 

東京と福岡では、日の出は夏至の時で44分も違います。日の入りは32分の差があります。

 

  夏至 冬至
日の出/日の入り 日の出/日の入り
根室 3:37/19:02 6:43/16:16
東京 4:25/19:00 6:48/16:58
福岡 5:09/19:32 7:21/17:39
那覇 5:27/19:24 7:17/18:04

 

太陽は24時間かけて360度動くわけですから、計算してみると、24時間(1440分)÷360度=4分となり、1度動くのに4分かかることが分かります。従って、東京近郊と福岡市の日の出などの時間差は、緯度に10度差があることから、約40分の差が生まれるのです。

 

夏の西向きのリビングで19時ごろ夕食を摂る東京と福岡の家族を想定した場合、8月1日であれば、東京の日没は18時46分なので、日没後の夕食となりますが、福岡の日没は19時19分なので、暑い西日を浴びながらの夕食となってしまいます。

 

同日、東京の日の出は4時48分なので、西向きリビングの反対側、つまり、東向きの寝室では、おそらく起床前の枕元をオレンジ色の朝日が照らし、部屋の室温もグングン上がっていることでしょう。

 

一般に、西日本では西向きが嫌われる傾向にありますが、居間で過ごす時間が夏の西日のきつい時間と重なってしまうからだと思います。

 

しかし、仕事を持っている主婦の場合、あえて西向き住戸を選択するのもありかなと思います。共働きの場合などは、朝、洗濯物を西向きバルコニーに干して、午後の太陽に乾かしてもらうことができるからです。

夏は確かに暑くて大変かもしれませんが、入ってくる日差しを遮る工夫をすれば凌げます。カーテンで調節したり、すだれを掛けたりしてもよいですし、またガーデニングでも工夫できます。
さらに、東京圏においては概ね西側に富士山を眺めることができます。高台の上に建つマンションや高層マンションの上階では、冬の晴れた日に富士山を望めるのですから、西向きマンションは価値あるものとなりましょう。

 

南向きには1日中日当たりがありますが、太陽の位置が高く、バルコニーの出幅が長い場合、部屋の奥までは日射しが入ってきません。一方、西に傾いた太陽は位置が低いため、(東の太陽も同様ですが)日当たりが部屋の奥まで期待できます。

特に、冬はさらに太陽の位置が低くなるため、リビングで日向ぼっこが出来るぐらいです。

 

それでは東向きでもよいのでは?いえ、午前中だけの日当たりではまだまだ寒いし、起床後で考えると実質3~4時間の日当たりしかありません。

 

その点、午後の日当たりは日没まで活用でき、洗濯物もよく乾きます。西向き住戸の場合、多くは反対の東側に洋室が配置されますから、寝室がこちらにあれば、朝日を浴びて体内時計が正常化し、気持ちよく目覚めることができそうです。

 

こう書くと、西向きマンション礼賛と受け取られてしまいますが、東向きにはきっと別の魅力があったりします。西の富士山はたまにしか見られないが、東には東京タワーやレインボウブリッジ、墨田川ビュー、銀座の夜景などが毎日楽しめるのかもしれません。
 

●北向きマンションはお買い得?

 

最後に、北向きのマンションについてお話ししましょう。北向きマンションも最近は珍しくなくなりました。タワーマンションでは必ずと言って過言でないほど数多く見られます。気を付けていると、普通の中高層マンションでも増えているような感じもします。

 

つい最近も、現在(2017年9月)販売中の、しかも東京郊外の町田市でも見かけました。北向きでも、東角や西角なら理解できるのですが、両脇を隣の住戸に挟まれた「完全な北向き」に遭遇すると違和感を覚えます。

 

売り手の言い分を聞くと、単身者は寝るだけだから構わないという割り切り方をするのだそうです。DINKS家庭でも、寝るだけだからいいのだそうです。間取りを見ると、1LDKか2LDKとなっています。本当だろうか?単身者でもDINKSでも休日は明るく冬暖かい南向きのリビングで過ごしたいのでは? 筆者はときどき、そう思います。

 

ともあれ、北向きマンションの小さくない魅力についてお話しします。

 

中古マンションの売買では、北向き住戸が他の向き住戸より値上がり率が高い(値下がり率が低い)という傾向があるそうです。データで証明されたこともあります。その理由は、次のようなことにあると分析できます。

 

(1)デベロッパーは新規分譲する時、南向きの価格を高くして北向きは安くする。売れ残りを嫌い、その値打ちを過小評価し弱気に設定しているのだ。

 

(2)購入者は南向きで間口が狭いよりも、北向きでも間口が広く眺望が良いほうを好む人が増えたが、もともと北向き住戸の供給が少ないので中古市場では人気の間取りになる場合がある。

 

(3)北向きでも前に建物がないと日中でも明るいケースがある。

 

中古マンションにおいて、北向きの割合は都区部では12%に上るというデータがあります。(首都圏全体では7%)

都心立地と価格の安さで選ぶ中古購入者には、向きは許容できる条件となりやすいのでしょう。購入者の志向が変わり、南向きで間口が狭いより、北向きでも間口が広く眺望が良いことを好む人が増えたのかもしれません。

 

単身者の増加など、世帯の構成人数が小さくなり、「南向き信仰」を持たない世帯・階層が増えているとも考えられます。彼らは、開口部の向きよりも、前に建物が建たないことを重視する傾向が強いと言われます。

北向きでも前に建物がないと日中でも明るいことに加えて、カーテンを開けた瞬間の開放感が求められているという分析をしている人もあります。また、洗濯物は浴室乾燥機で干すのが当たり前になり、バルコニーが南になくても問題ないと考える単身者やDINKSも多いのでしょう。

 

ともかく、新築マンションを検討するとき、北側住戸にも注目してみましょう。価格を専有面積で割って、住戸ごとに単価を比較してみるといいですね。他の向きと比べてみて、思い切った価格差がついていたらお買い得物件と言えるかもしれません。

 

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