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三井健太第2回 2017年12月1日「超高層マンション低層階の値打ちは?」

「タワーマンションは眺めの良い上層階を買わないと価値はない」という意見を聞きます。そう考える人が多いのでしょう。確かに、上層階に人気は集まります。新築時の売主は人気薄の低層階も売らなければならないので、価格を安くします。高層階はもちろん高くします。

ちなみに、郊外の駅前・某タワーマンションの価格を見てみると、同じタイプ・広さでも34階が5120万円ですが、19階では4640万円となっています。その差480万円で階数差は15層。480万円を15で割ると、平均32万円ですから、1階上ることに32万円ずつ高くなる計算です。

このマンションの5階は4100万円で、34階とは1000万円ほどの差があるのです。それほど実質的価値に差があるものでしょうか? 5階と34階なら、このくらいの価値の差が実際にあるような気がしますが、現物を見ていないので不確かです。

 

●プレミアム住戸の眺望と値段

今度は、都心の高級なタワーマンションを見てみましょう。

下層階と上層階ではプラン・広さそのものが大きく異なるため比較しにくいのですが、千代田区のある物件は、最上階(40階)のプレミアム住戸の坪単価が約@700万円、20階の一般タイプで約@550万円と、その差@150万円、仮に80㎡同士なら総額3600万円と大きな価格差があるのです。20階と40階で、それほどの価値の差があるのでしょうか?

 

上下階の格差がこれほど付いていない物件もありますが、上記の物件の場合、プレミアム住戸と一般住戸の室内の設備と仕様の違いだけでは説明がつきません。やはり、眺望の価値の差なのでしょうか?

 

眺望の良い住戸が欲しくても予算が足らない人は、否応なく低層階の住戸に目を向けます。そんな買い手の中には、自嘲気味に「もっと上の方を欲しいが、そこまでの予算を持っていないのでねえ」や「眺望もいいけど、こんな広い家はいらない」などと感想を述べる人もいます。

そんなとき、眺望は上階に設けられたビューラウンジやパーティールームなどへ行って景色を楽しむことにしたらよろしいのです――このような担当営業マンの説得(慰め?)トークがあるようです。

確かに、上層階を購入しても1日中、外を眺めて暮らすわけではないし、景色などというものは5分も見たら飽きるのです。そこに1000万円も2000万円も予算をつぎ込むというのはいかがなものかと言われると、妙に納得してしまいそうです。

それでも上階を求める人があり、人気はそこに集まるもので、そんなお金持ちのために、プレミアムフロアを用意し、その階は全てプレミアム住戸となっています。

このような超高層物件は数多く見られます。プレミアム住戸とは、他の階とは違う仕様になっているだけでなく、広さも大きく異なるタイプのことです。

単価が高く、広さもあるので、価格は中間階の住戸に比べて5000万円も1億円も高いのです。都心の一等地に建つ30階以上のタワーマンションでは、最上階が数億円、20階あたりで1億5000万円といった価格差が普通です。

プレミアム住戸の買い手になると、下の方の狭い住戸には最初から目をくれず、高い住戸同士の比較でどれにするかと思案する格好になるため、いかに割高な価格が設定されていても、下層階とは無関係なのでしょう。

 

●眺望の値段

眺望という要素だけを切り離してその価値を測るのは中々難しいのが現実です。建設場所によっても異なりますし、同じ場所でも見える景色によって価値が違って当然です。また、平均5000万円のマンションと、平均1億円のマンションでも上下階の価値観は違うはずです。

価格設定の際、マンションメーカーはいつも悩むようです。この場所、この眺望で1階あたりいくらの差が妥当かを、住戸の方位でも変わる景色をイメージしながら、A案B案・・・と価格案を作成します。数字は経験から導かれます。超高層物件が初めての業者でも、他社の実例を参考に草案を作成します。

それを、プレセールス段階で「第1期・予定価格表」と書いて、部分的に数字を覗かせた形にして顧客に提示し、その反応を観察します。その結果から、上げ下げの調整をして決定するのです。

つまり、眺望価値の妥当性は売り手も最初は手探りなのです。値段は買い手が決めるという法則に従うということかもしれません。

 

●有名マンションなら下層階でも秘かな自慢になる?

ところで、階数に関わらず超高層マンションに住んでいるというだけでステイタス(地位・身分)が実感できるという意見もあります。正確には「ありました」という過去形です。超高層マンション自体が珍しい時代の意見だからです。

周知のように、首都圏ではもはや超高層マンションが珍しいものではなくなりました。郊外に行けば、駅前再開発によって建てられたランドマーク的なタワーマンションも依然として見られますが、都心ではステイタスシンボルとは言えない時代になったのです。

タワーだらけの街も珍しくありません。タワーに住んでいることが誇らしいと思えるのは、他が30階どまりの中に50階クラスの飛び抜けた高さで差をつけているような物件に限られるのかもしれません。

また、似たようなデザインが多い超高層マンションにあって、自分のところだけが際立つ外観を誇るというようなケースなら、そこにも誇りを感じることでしょう。

超高層マンションは、多くの場合、300戸、500戸、ときには1000戸にもなる大型であることから、共用部分は広く豪華な造りになっています。エントランスと、それに続くロビーやラウンジはちょっとしたシティホテル並みの威容を誇ります。

このような建物が完成したとき、購入者の殆んど全員が驚嘆し、感動して喜びに浸ることになるのです。

どのような分野につけ、誇りとは周囲の賞賛(他人が羨ましいと感じること)があってこそのことです。マンションの場合では、通俗的な言い方を許していただけるならば、「どうだ俺の家は」と周囲に対して胸を張れる建物だからこそ、ステイタスシンボルたりえるのではないでしょうか?

そのような顕著に差別化された超高層マンションなら、低層階に住んでいても秘かな自慢の種になるのかもしれません。そのようなケースなら、比較的少ない金額で下層階を購入し、価値あるマンションの住人になるのも悪くない気がします。

眺望は上階に設けられた共用施設(ビューラウンジなど)が、住戸の上下の差別なく利用できるのですから、ときどき足を運んで景色を楽しめばいいのです。

このような合理的価値観には賛成してあげたい気がします。

ただ、「何階?」と聞かれて困る人や下層階の住まいに劣等感を覚えるかもしれないと想像してしまう人は止めた方がいいでしょう。

 

●個人的価値観では

かつて30階超のタワーマンションの住人であった頃(事情があって住んだ期間は短かく終わったのですが)、エレベーターで上階から降りて来る人の中に、偶然何度か乗り合わせる家族がありました。私の家は中ほどの階でしたが、その家族は何階に住む人だろうかと想像したりしました。身なりが良く、とても上品そうな子供二人と若い両親の4人家族です。

最上階のプレミアム住戸の住人だろうか? 若い人だが親の援助で購入したのかもしれないし、私の家より広く高額の住まいに住んでいることだけは間違いないのです。正直なところ、俗人の私には半分羨ましいと感じる瞬間でした。

半分と言うのは、私より下にも家があるからです。下は値段が安い、下は狭い、その家に比べれば私の家はかなりマシだ。眺望だって悪くはない。誇っていい。そんなふうに、自分をどこかで諦めさせ、誇りを保っていたような気がします。

考えてみれば、上を見ればキリがないのです。自分の力でできる精一杯の家、すなわち都心の新築、先進の住まい、ブランドマンションでもある、それが手に入ったというだけで十分に満足でした。

――我田引水ですが、このように過去を振り返ってみると、あまり低層ではいかがなものか、せいぜい中間階までが超高層マンション購入の妥協点なのではないかという気がします。

とはいえ、ものの考え方や価値観は百人百様です。合理的な価値観や情緒的な価値観があるでしょうし、虚栄心の強い人・自己顕示欲の強い人などと他人の目を気にしない人でも価値観は変わるはずです。

ゆえに、超高層マンションの2階や3階でも買い手は現われるのです。

つまり、将来の売却も低層階だから売れないなどの心配は、きっと杞憂に終わるだろうということです。

問題は価格です。安ければ買い手が現われるということです。従って、購入価格も安い方が安全ということになります。売り手が十分過ぎるレベルに価格を抑えてくれているでしょうか?

お買い得感のある価格であれば、低層階を購入するのも間違いではないということになりそうです。

無論、その価格が「十分過ぎるレベル」かどうかの判断はケースバイケースになり、ここで一定の法則めいた説明はできませんが、割り切って下層階を購入するのも一考に値すると思うのですが、いかがでしょうか?

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